
トリップメーターが150kmに差し掛かりそうだ。
その旨を告げ、見慣れた看板はないかと見知らぬ街を走り見上げる。
爽快感に振り切ったこの愛馬は、中々どうして、燃費が悪ければ胃袋も小さいためこまめに食わせる必要があった。
「だからいい加減四輪買えばいいんだよ」
分かりきった事を口にする親友のぼやきと、
携行缶や自走しない車両への給油は——
お決まりのアナウンスを聞き流す。
無機質なパネルに触れながら、レギュラー、満タン。
「近頃じゃ1000円でお釣りが返ってくるか怪しいもんだな」
「うん」
そこは強く頷いてしまった。
キャップを開けて左手でノズルレバーを引いた時、空いた右手が静かに持ち上がった。
「……やっぱ運転してると冷えんだな」
そう言って親友が静かにオレの手を握りしめた。
吹きこぼれにご注意ください——
分かりきった事を告げるアナウンスをBGMに、夜が見つめてきた。
胃袋が小さい愛馬は16秒で満タンになる。
たった16秒で、手はすっかり体温を取り戻していた。